500とSlush、VCと利益追求を目的としない団体の相違点(私見)を挙げてみた

※VCと利益追求を目的としていない団体といっても、単に500とSlushを比較した私見を述べただけの自己満ブログです。

 

「"Global from Day one" is the key for us.」

 

8月2日、インターン初日、 朝9時から続く怒涛のミーティング嵐の前に、Jamesが500についてのレクチャーをしてくれた時、彼がこんなことを言った(一字一句を覚えているわけではないが、要するにこんな意味合いだった気がする。彼は、経済用語だけでなく”VC”や”ファンド”の言葉の意味さえ知らない無知な私に、”VC101”なるレクチャーを開いてくれたり、私のわがままである週一フィードバックの時間を設けてくれるくらい、見た目やイメージに反して面倒見がいい)。

 

前日から続いていた極度の緊張のため(前日は500の有名な投資先を調べたり500 Japanにまつわる記事を読み漁ることで気を紛らすという、テスト前にいつも一夜漬けをする私の性格がよく表れた)、記憶が鮮明に残っているわけではないが、この時、無性に嬉しかったことだけはよく覚えている。

 

何故ならば、”Global from Day one”は、前職(?)のSlush Asiaでコンセプトミーティングやイベントの意義・ゴールを話し合う際、いつも大切にしていたことだからだ(スタートアップや起業家を支援するという大前提の上に、とりわけ、初回の2015年が”Global” [全プログラムの英語進行]、今年2016年は”Youth”や”Rebel” [直訳すると反逆者、運営を学生・若者主体にすることで年齢に関係なく大きなことを成し遂げられる、という挑戦心を表す] のようなコンセプトを一応掲げていた)。

 

この時点で、ただのインターンという立場ではあったものの、社団法人からVCにジョインすることに少なからず不安を抱いていたからこそ、この衝撃はなんだかとても嬉しいものだった。

 

そもそも、考えてみると、Slush(フィンランド)も500(アメリカ)も、もともと海外から日本にきていて、同じスタートアップエコシステムにいるプレイヤーとして(一般通念上、VCとイベントをプレイヤーと呼ぶかは知らない)、似通っている点が多いのではないかと感じる。

ただ、正直なところ、数ヶ月前までは”投資家への苦手意識”が何故かずっと頭の中にあったので、VCという環境に1ヶ月身を置いてみて、素直に感じるノンプロフィットとの違いを書き出してみようと思う。

 

※繰り返しになりますが、VCと利益追求を目的としていない団体といっても、あくまで500 StartupsとSlushを比較した私見を述べるだけになります。

 

 

◆組織形態

そもそも、それぞれの組織形態は会社なのか?ということで調べてみる。

500 Japan: 日本では、500 Startups Japan, L.P.リミテッドパートナーシップ:有限責任組合)というマイクロファンドとして成立されている。実は、500では、500 Startups Management Company, L.L.C.Limited Liability Company、リミティッド・ライアビリティ・カンパニー:有限責任会社)のもとにメインファンドがあり、10以上のマイクロファンドを世界中に設立している(いずれ、500という名前は投資先の数 [確か現在1,600社近く] ではなく、ファンドの数になるのではないかというジョークもあるほど)。これらは全て独立しており、メインからマイクロにLP出資やアドバイザリー・サポートがあったり、共同出資をする関係にある。組合と会社の違いはよくわからないのでスルー、とにかく500 Japanは会社ではなくファンドとして成立しているらしい。

Slush Asia: Startup Sauna Foundation(財団、スタートアップ支援活動全般)のもとにStartup Sauna Oy(株式会社、イベント「Slush」の運営を行う)があり、そこでSlushをはじめとするいくるかのスタートアップ支援が行われている。一方でSlush Asiaは、2015年の開催前に、日本に一般社団法人SLUSH ASIAを設立している。

 

◆ミッション・目指しているもの

500 Japan: ①大きなクロスボーダーM&Aに携わる事。②日本から真のグローバル企業を生み出すことに貢献する事。 

Slush Asia: ①Global -「最初からグローバル」を当たり前に。②Open - 国内外の誰もが参加できるオープンでフラットなコミュニティ作りを目指す。③Cool -「スタートアップはカッコイイ」という魅力を若者が感じ、新しい価値創造に果敢に挑戦する人を増やす。

相違:リンク先にも記載があるが、クロスボーダー・国内EXITやIPOを増やすこと、シリコンバレーや海外にいる他のVCを日本に連れてくること、グローバルネットワークを駆使し日本のスタートアップの海外展開を支援する、という強固なグローバルネットワークを持つ500 Japanに対し、人口500万人(北海道と同じくらい)のちっぽけな国に、シリコンバレーのようなアツイ場をつくろうと広がったグラスルーツの起業ブームを、「起業家をロックスターに」のコンセプトのもと日本で広げていこうとするSlush Asiaは、少しテイストが異なる。

が、海外で成功・広がるムーブメントやコミュニティを、「日本のスタートアップエコシステムをよりアクティブに」するために日本にもってきた、というスタイルは結構似ていると感じる。

 

◆運営・メンバー構成

500 Japan: (マネージング)パートナーが2人と、フルタイムアシスタント1人、インターン2人(2016/9/4時点)。

Slush Asia: CEO(社団法人役員)と、その他各部署(パートナーシップ、マーケティング、スピーカー&プログラム、スタートアップ&インベスター、リーガル&ファイナンス、プロダクション、IT、人事&ボランティア)に学生・既卒が1~2人ずついるイメージ。イベント数ヶ月前からは各部署にプラス数名、各チームのリードが20人前後増え、当日は学生(社会人も1割弱)ボランティアが400人強携わっていた(Slush Asia 2016の場合)。

相違:メンバー構成が圧倒的に異なる(組織形態が違うことと、そもそも業務内容が全く違うから)し、携わっている年齢層にも違いがある。

ただ、働く環境としては、どちらもスタートアップライクで、(私的に良い意味で)整備されていない点が多く感じる。また、双方海外にヘッドクォーターがあるため、現地のチームとのやりとりが多く、”ファミリー”が各国にいて何だかとても頼もしく楽しい。

 

◆カルチャー

ここに関しては、日本だけではなく本家のところから着目する(あえて原語のままで)。

500: Humble, Diversity, Misfit, Crazy, Change, Global, Knowledge, Geek, Inclusive

Slush: Global, Open, Cool, Rebel, Youth, Inclusive, Diversity, Challenge, Mistake, Volunteering (Non-profit), 

相違:500は良い意味で起業家の年齢にこだわりを持っていない(人柄・チーム・プロダクトが良ければ年齢は問わない)点に反して、Slushは、起業家だけでなく、同時に次世代・若者の起業家や彼らの起業家精神が育っていくことにより重きを置いている。面白いのは、双方グローバルとうたっているものの、500 Japanはマーケティングに”日本語”を使用し、一方のSlush Asiaは”英語”のみを使用することにこだわっている(500 Japanは日本のスタートアップを本気で支援するために日本語でアプローチをし門戸を広げ、Slush Asiaは英語縛りにすることで海外展開や英語でのピッチ等をより身近に感じてほしいと考えていると推測する、どちらの理由も理解できる)。

ただ、500は世界規模で見てもチームや投資先の人種や性別、肌の色、使用言語が多様であったり、Slushはチームに私のような女性・スタートアップに精通していないメンバーが多かったり、意図的に登壇者・登壇企業も性別・国籍の比率を調節したりしている点で、どちらもダイバーシティ・インクルーシビティにかなりこだわっているように感じる。また、働いていて感じるのは、両者失敗を歓迎する空気があることと、「やってみないとわからないじゃん」的な勢いは少なからず、いや大いにある。

  

◆エコシステムでの役割

500: シリコンバレーからやってきたVC。

Slush Asia: 北欧フィンランド発祥のイベント・カンファレンス。

コメント:ここに関しては私も勉強中のことが多いのでまとめ方がわからないが(それでも書きたい)、そもそもスタートアップや登記したて・する前の企業がスケールするためには資金(投資家)が必要で、起業家が国内外の投資家に一同に会えるのがイベントやカンファレンスである、という当たり前のことを半年前の私は知らなかった。

ただ、双方に多少身を置いて感じるのは、ただのVC・イベント業務だけではなく、どちらも日本のスタートアップエコシステムをよりアクティブに、大きくするため(要するに起業家の数と資金調達の総額を増やすこと?)、大企業や行政とコラボしたり、海外のスタートアップ・投資家を日本に呼んできたり、起業家になりうる人(学生・企業に勤める人)を支援しているのは、どちらもとても重要な役割であると感じている(そして、この部分に最も惹かれて私はこれらの組織に入ったのだと最近気づいた)。

 

 

以上は、インターンを始めて1,2週目に毎日感じていて、どうしてもどこかに書き留めたくてうずうずしていたことである(このためにブログを始めたのは言うまでもない)。

前述したように、Slush Asiaを終えた後に500にインターンとしてジョインすることには多少の迷いと不安があったが(いろんな人に相談していたので、応援してくださる人の中の中には、起業してみては、スタートアップに入った方が、と意見をくださる人もいたし、実際自分でもそう考えていた)、組織のカルチャーや事業・出会える人の層を考えると、私がここに入りたいと思ったのはごく自然な流れだとも感じている(し、今になってはアメリカの夏期プログラムに落選して良かったとポジティブに考えられるようになった)。

 

 

 

最後に、私がここ1週間最も感じたことをもう少し。

 

◆立ち位置

500 JapanもSlush Asiaも、VCと一般社団法人(イベント運営)という立場上、数千〜数億・数十億規模のお金を運用する。そのお金がどこからくるかというと、協賛や出資を行ってくれる(Slushではパートナー、500というかVCではLPと呼んでいる)エンジェル、大企業、銀行、行政、各種機関だ(イベント協賛はイメージしやすいが、これまで投資家=ベンチャー・スタートアップに投資している、というイメージしか抱いていなかった私は、そもそもこの大前提の構図を知らなかった。絶賛勉強中)。

 

何故かここにきて改めて感じるのは、小さな企業がスケールするために投資家やイベントの存在はもちろん重要であるけれども、それ以上に、そのVCやイベントに出資している大企業の社会的影響力や資金力はえげつなく大きいということである。

 

こんな小さいけれど大きなお金の動きを目の当たりにし、こうして社会は回っていたのかと、ずっと忌避していた経済学への興味も湧いてきた。

「将来やりたいことは何なの?」と聞かれることもしばしば。まだまだ、自分の興味や関心を開拓している道半ばだけど、もう少し時間をかけて寄り道をしながらいろんなものを拾っていこう(ちょっと無理やりだけど、1ヶ月間もやもやしていたことの一部を吐き出せたので終わり)。