人の上に立つ時にこそ大事にしたい3つのこと

「I do give feedback to you every week, BUT do you have any feedback for me?」

 

突然上司のJamesがこんなことを言うので、私は固まった。
正直、「学生インターンの身で、外銀出身、起業経験のあるベンチャーキャピタリストにどんなダメ出しをしろと?!」と一瞬戸惑った。

 

週4日を彼の隣のデスクで過ごしていると(もちろん朝から晩までミーティングの嵐、その合間に各イベントやカンファレンス登壇が入っているので、いつも彼がデスクにいるわけではない)、良いところに気付いたり、良い意味で考えさせられる点が多いのは事実である。

 

ただ、どうしても決定的なネガティブフィードバックが思いつかなかったので、肯定的なフィードバックのあと一瞬間を置いてから「時々、もっと気長に(優しく)いこうよ、と思うときがあるかな。外で食事しているときとか、店員さんへの対応が時々アメリカ人っぽい」と答えた。

 


この会話は、Jamesへの有益なフィードバックとはならず「この人は何て腰が低いんだろう、」という大きな衝撃を私に残して終わった。

 

 

ということで今回は、人をまとめる・人の上に立つ、いわゆる”リーダー”の立場であった時の過去の自分の経験を振り返りながら、今の自分が考える、今後自分が「人の上に立つ時にこそ大事にしたいこと(超ベーシック編)」をまとめようと思う。

 

 

 

1. 相手の瞳を見つめる

 

小さい頃、私の母は「きちんと勉強をしなさい」よりも「きちんと相手の目を見て話を聞きなさい」と私に言い聞かせる人だった。
そのせい(おかげ)か、小学校の担任だけでなく、当時習っていたピアノやヴァイオリンの先生、スポ少卓球の監督・先輩方にも、「食らいついてやるぞ」という若干挑戦的な眼差しを向けながら、彼らに育ててもらった。

 

最近、これは私の価値観を構成する要素の1つになっているのではないかと感じることが多い。この経緯から、対面で人と話をする時、私は今でも絶対に相手の瞳を見る癖があり、その相手が同様であるか否かによって彼らの印象すらも無意識に判断してしまうからだ。

 

最近読んでいる本に、これにまつわる興味深い一節があった。

 

”トップに上りつめ、さらに本物と呼ばれる人や一流と呼ばれる人達は、必ず「コネクト」という技術を使っているのです。コネクトとは、自分自身をアピールするよりも先に、相手の世界観を理解し、そこに自分の世界観を投影させ共感を生む技術です。最も簡単な技術として「相手の瞳を見つめる」という方法があります。”

小山 竜央(2016/9/29)『スマホの5分で人生は変わる』 KADOKAWA

さらにこの本によると、

”夫婦円満の人や長続きするカップルに共通する点は、パートナーと目があったとき、「瞬きのタイミングが同じ」という統計が出ています。”

 

らしい。

 

でもこれは恋愛に限らず、私がこれまでの人生で出会った部活動の先輩後輩同期やプロジェクトの仲間、今頻繁に出会う起業家や投資家、成功した経営者、その他色々な人々にも共通して言える気がする。
「この人、○○が尊敬できるなぁ」と直感で思う人は、大抵、他者が話している時、その人の目や表情を直視しているように思う(中にはごく一部、例外の人もいる)。

 


2. 自分より下の立場の人に対し、謙虚でいること

 

理想のリーダーのタイプは複数あると思う。が、最近私が「これだ!」と思ったのは、上司のJamesが「僕にフィードバックない?」と言った時や、500の投資先の創業者の方が、ただのインターンである私の話を丁寧に聞き入れてくれた時であった。

 

言語化が難しいので、改めてぐぐってみると、謙虚とは

”控え目で、つつましいこと。へりくだって、すなおに相手の意見などを受け入れること。”

 

だそう。

 

Slush Asiaのプロジェクトをやっていた時、私はこの謙虚さが足りなかった。もちろん周りのサポーターやパートナー、年上の方々に対しては、なるべく謙虚な姿勢でいようと気を配っていたが、(自分の心に余裕がない時に)自分より年齢が若かったり経験が浅い人・立場が弱い人に対して謙虚でいることは、想像以上に難しい。

 

特にこれは、「自分が組織を動かさなくては」というプレッシャーや責任感が強ければ強いほど難しいんじゃないかと思う。

数回、自分より若いメンバーに対して、きつい口調で怒鳴ったことがあり、これについて後悔の念とともに後ほど母に相談すると、

 

「確かにあなたはこの数ヶ月間頑張ってきたと思うけど。やっぱりお母さん、それだけは聞き流せないかなぁ。人の上に立つ時ほど、丁寧に、謙虚で、優しくいないと。その人たちはついてこないよ」

 

と言われた。自覚していたものの、これが結構ショックだった。
幸い、今ではそういう姿勢を体現している上司に出会えたので、これについてより近くで観察し、学びたいなと思う次第である。

 


3.「あなたはどう思うの?」と考えを引き出し、どんな答えでも受け入れる

 

インターンを初めて、2週間ほどが経過した時。組織のカルチャーや歴史、仕組みをまだよく分かっていない頃の私が、500の日本ファンド設立1周年記念イベントを担当することになった。

 

自分たちとしてどんなイベントにしたいのか、来てくれるであろう起業家や投資家、大企業の人たちに何を提供したいのか、全く分からない状態であるにも関わらず、Jamesが「What do YOU think? What do YOU want to do?」とよく聞いてきた。

 

最初は、「忙しいから押し付けられてる・・・?!」と若干思ったくらいだったが、それ以降、イベント企画するとき、コミュニティのあり方について考えるとき、外のイベントや他の企業・人について話すとき、起業家とのミーティングのとき、彼はよくこれを聞いてくる。

 

ふと、アメリカに留学していた時のことを思い出す。ネイティブに混ざって受ける授業では、自分の意見を言わなかったら、完全に”存在しないもの”として扱われる雰囲気だった。
英語が得意じゃないとか、この意見を言ったら皆にどう思われるんだろうとか、そういう不安と恐怖でなかなか考えていることを言えなかった。

 


そんな、常に「お前はどう思うのか、何を感じているのか」と問い続けられる環境に身を置いて4ヶ月半、ようやく「こうした方がいいと思う!」「こういう勉強会、私だったら行きたいと思うんだけど、どうかな?」と少しずつ意見を言えるようになった気がするし、他者と同じ意見だったとしても言いにくい意見だとしても、絶対に自分自身で考えた結果・思うことについて声を上げるべきだと考えるようになった。

 

 

反対に、何か目の前のことに突き進んでいるいるとき、特に自分がその中心・誰かに上の立場にいるとき、私は自分の考えだけで突進してしまいがちになる。
そんな時にこそ、同じチームにいるメンバーや、大勢の前で意見を発しないような人にこそ意見を聞き出し、どんな意見でも否定しない(取り入れるかどうかは別として)ことが大事なんじゃないか、と思う。

 

 

ということで、2016年12月時点の私が考える、何かのプロジェクトや組織で「人の上に立つ時にこそ大事にしたいこと」は、

 

1. 相手の瞳を見つめる

2. 自分より下の立場の人に対し、謙虚でいること

3.「あなたはどう思うの?」と考えを引き出し、どんな答えでも受け入れる

 

である。

 

 

数ヶ月前まで、まさに人をまとめる・人に指示を出さなければいけない立場にいたものの、今思い返すと全然できていなかったことや、後悔している点が結構いやかなり多い。今は、人の下(正直、フィードバックをもらう時以外は、良い意味で上下関係をあまり感じないが)で働いているので、この環境にいる間は、可能な限りこういうポイントをたくさんインプットしたいなと思っている。

 

もちろん、”考えたり、意見を言う”ことを”実際にやる”のが難しいことは十分承知しているつもりではあるが、次に自分が誰かの上に立つとき、こういうところをなるべく意識して実行したいなぁと思うし、いつか実際にやっていく中で、「これも重要だ!」と思うところは、随時アップデートしていきたい。