お世話になった500のコミュニティを離れるという決断

「僕が起業した時は起業家仲間がいなかったから、500ではそういうコミュニティを作りたいんだよね」

 

インターンとして500に入った一昨年の夏、上司のJamesから言われた言葉。自身の原体験をもとに、投資家と起業家では理解し合えない部分もあると言い、投資家として、応援する起業家のためにコミュニティを作りたいという想いに惹かれた。その共感が、今日まで私の頑張る源だった。

 

 

そんな自分が、なぜ500を辞めるのか。お世話になったごく一部の人にしかお伝えできずに今日まで来てしまったので、ここに自分の気持ちの整理としても書き残そうと思う。

 

 

何故辞めるのか?の前に、何故500に入ったのか?

インターンを始めた頃の私は、そもそも

ベンチャーキャピタル自体に興味は無かった。

 

では、何故そこに関心が無かった自分が500に惹かれたかというと、

・創業期のスタートアップで働くことに興味があるものの、何の基準でどの会社を選べば良いか分からない

・当時スタートアップと同じく興味のあったNPOや社団法人を継続させるために、熱意だけではなくビジネスとファイナンスが大事なのではないかと気付き始めていた

・自分自身や社会の課題と向き合い、その解決のために己の時間と命、人生をかけている起業家に強い関心があった

 

それからもう1つ、純粋に

・直感で500のカルチャーに惹かれた

mamihigashino.hatenablog.com

からだった。

 

蓋を開けてみると、ファンドが立ち上がって半年後(当時は出来たばかりの大手町のオフィスに、パートナー2人とマーケティングインターン1人が時々出入りするだけの“チーム”だった)にジョインした私は

 

・(米500 Startupsの血を引く日本ファンドであるため)ビジョンや目指す方向性は明確だけれど、500 Startups Japanという組織自体の文化や仕組みがまだ形成されていないこと

に軽い衝撃を受けた上で、

・ゼロから「起業家同士のコミュニティをつくる」 という使命と向き合い始めた。

 

とは言え、VCのことはおろか起業家、スタートアップについてもほぼ無知だった自分は、そもそも社内で交わされるやり取りや起業家同士の会話についていけず、目の前に起こっている状況を飲み込み理解していくこともやっとだった。

 

ただ、困難に直面するととことん落ち込み、その後少ししてから、持ち前の負けず嫌いな部分としぶとさで挽回する特性を持つ私にとって、そんな環境はぴったりだったし、何よりも、Slushに引き続き、散らばっている綺麗なパズルのピースのように個々が強い組織の立ち上げ、組織の雰囲気づくりにまさに貢献できる経験は、とても貴重でワクワクしていた。

 

ならば、いつから辞めることを意識していたのか?

と聞かれると少し考えてしまうが、短く答えると「最初から」である。

冷たく聞こえるかもしれないが、もともとVCや投資に興味があったわけではないので、初めて今の上司に出会った面接時にもこれを素直に伝えたし、イベントで上司たちの目の前で自己紹介をする時にも、「起業家やスタートアップに強い関心があり今ここにいるので、いつかは失敗しても良いから自分で何かに挑戦したい」と言い続けていた。

 

だからこそ、「いつまで自分は 500にいるのか?」と日々自分に問いかけてきたし、今ここでできることは最大限やろう!という気合いで何事にも取り組んだ

 

コミュニティづくりは、自分自身に知識や経験が無くたってできる、という事実に気付いてからは

mamihigashino.hatenablog.com

 

起業家向けの勉強会を開いてノウハウ共有の場をつくり、対面で悩みを聞かせてもらいまた別の学びの場づくりに繋げ、カジュアルな場を設けて投資先の創業者同士・従業員同士を繋げて彼らが相談し合えるような雰囲気をつくったり、時に採用のために会社の文化に合いそうな転職希望者を紹介したり、投資先で働いているチームメンバーを取材させてもらったり、時に投資に繋げるために初対面の起業家に会いに行ったりもした。

 

(「起業家のコミュニティ」はふわっとしていて正直実態が無いので、成果を数値的に測ることが難しく悩ましかった。が、毎月2~4回ペースでイベント・勉強会を開催してきたので、この2年弱での総開催数は相当な気がしている。昨夏から本腰を入れ始めた投資先の採用サポートは、直接の紹介や採用イベントを通じて2人のインターンを含めた計10人の採用(NO FEE!)に関わった。投資に関しては、開催したイベントから出資に繋がったことと、自分の紹介した会社への出資が決まったことが実際に目に見える功績。あとは、最後の仕事として上司2人を取材した記事が個人的には超傑作なので、たくさんの人に読んでもらえたら嬉しいな)

 

500startups.jp

 

 

では何故、今このタイミングで500を辞めるのか?

「スタートアップ面白そう」「起業家に興味がある」と純粋に思っていた私にとって、これほど興味があることを自由にいくつも選択させてもらえて、かつ挑戦させてもらえるエキサイティングな環境は他に無かったと思う。

 

ただ、どんなにやることやできることが増えて幅広くなっていっても、それらが偶然によるものなのか自分のスキルに繋がるものなのか分からず、もどかしい思いを感じたりもしていた。加えて、強いビジョンや想いを抱え挑戦している上司や同僚、周囲の起業家と比べがちになり、「じゃあ自分は一体何を極め何がしたいのか?自分の時間を使って、誰にどんな影響を与えたいのか?この人たちのように、自分が絶対に代替されないものは何か?」と考えると、どんどん自分に自信が持てなくなる一方で、自分が所属する組織の知名度ばかりが高くなっていく焦りのような感覚も拭えなかった

 

ここであえて単刀直入に言うと、初期から掲げていた「投資先の起業家のコミュニティをつくること」に必死で向き合っているうちに、気付かぬ間にその目標が達成されてしまっていることに気付き始めた瞬間でもあった。それは、投資先の創業者同士が相談し合う場面や楽しそうに笑い合う姿を見るだけでなく、彼らが私たちのいない場で「500Family飲み会」なる会を開いていたり、「今度のイベントで500Familyの○○社と●●社が・・」という話を聞くことでも実感し始めていた。

 

そしてさらに言うと、そのコミュニティを今後いかに維持し、活性化させ、伸ばし成長させていくのかというフェーズに入りつつあることにも無意識に感じていた。だからこそ、物事の立ち上げが好きな反面、整備や継続・改善させていくことが苦手な自分の役目は終わり、これからはその部分を得意とする人にバトンタッチした方が良いんじゃないかと勝手に考え始めていた。

 

 

では逆に、何故この決断ができたか?

という想いもまとめておきたいと思う。

 

上司のJamesには、最後まで「マミは本当にフライングでニートだね!」と言われたが、何だかんだ私自身も「次の道が確実に決めるまでは500にいるだろう」と無意識に思っていた時期はあった。

 

最終的に何故、転職先も決めず、明確な予定も決めず、収入源も確保せずにただ仕事を辞めるかと言うと、

 

・自分に、目の前のことにしか120%のパワーを捧げない不器用さがあると気付けたこと。だからこそ明日以降は、自分が今後の人生を何に使いたいかを考えることに120%のパワーを注ごうと思う。

・Slushでの活動と、500で働いた期間を合わせるとちょうど3年になること。特に、「東京」「スタートアップ」「国内」という文脈では共通しているので、自分の中では、ここで社会人1.0の幕が閉じる感覚でいる。

・しばらくの間は、働かなくても大丈夫な資金を準備していたこと。もともと起業や何かしらで挑戦したいと思っていたので、毎月のバーンレートを低くしてお金は大事にしてきたつもり(そもそも食欲以外の物欲が少ないしお酒を飲めない体質なのもある)。

・最近結婚した兄の奥さんが、自分と同い年の芯の強い女性だということ。事実自体は特に衝撃的では無いものの、結婚願望のある自分に今もし仮に「結婚しよう」と言ってくれる相手が突然現れたとしたら(イメトレという名の妄想)、私は何を後悔するのか?と考えた。

・現時点でスキルもプライドも、守らなければならないモノや人も無いこと。「自分には何も無い」という意識が逆に追い風になったことと、幸いにも家族が皆健康で元気で、かつ背中を押してくれる偉大な存在だということは大きい。

・居心地が良い場所にいて、何でも得られる守ってもらえる環境にずっと甘えていてはダメだと気付いてしまったこと。500で働くことは、もちろん大変で辛いこともたくさんあったけれど、それ以上に、こんな自分でも毎月のお給料が保障されていて、普通の自分では絶対に知ることも無いことを学べたり接点すら持てないような人と繋がれる環境は、数々の起業家に会う中で「このままではダメだ」と感じ続けていた。

 

 

そして最後に、

・例え今離れても、ずっと関わっていきたいと思えるコミュニティになっていて、ずっと応援していきたいと思える人・会社にたくさん出会えたなぁという事実に気付けたこと。

今日500を辞めたとしても、明日もし資金調達中の素敵な起業家に出会ったら、間違いなく500をオススメするし、紹介したいって思う。それに、転職中でスタートアップに興味を持つ人に出会ったら、これまで親しくしてもらった企業に紹介するだろうなって思う。

 

上司のJamesに1月末に退職相談をする前、ギリギリまで散々悩んだ結果、最後に自分の背中を押してくれたのはこの事実だった。

 

だから、私は自分が1番お世話になった500 Startups Japanのコミュニティを離れるという決断をした。

 

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次の挑戦は全く決まっていないけれど、しばらく無の期間を設けて(フライングでニート)自分と向き合うことに120%のパワーを注げようと思う。アメリカ留学から帰国した3年前に、漠然と「台湾・中国に行きたい」とよく言っていたので、行ってみようかなと思ったり。

 

最近気付いたこと。案外他人は他人のことを気にしていないから、心配も期待もはね退けて、自分の視野を広くして、可能性も狭めないで、自分の心が本当にやりたいと感じることを観察して、少しずつ何かを始めていこうと思う。

 

 

最後に、今日までに直接ご挨拶させていただけていない皆さんと(直接でなく、かつご報告が遅れ申し訳ございません)、「500のコミュニティマネージャー」として出会い、たくさんのことを教えていただいた上司、同僚をはじめ、起業家、スタートアップで働く人やスタートアップのコミュニティを支援し活動されている方々全員に、この場を借りてお礼を言わせてください。

1年9ヶ月という短い期間でしたが、本当にお世話になりました。そして、東野万美としても、今後ともよろしくお願いいたします。

 

"One door closes, another door opens."

 

(完)